2005年の北米のハリケーン災害において、災害発生後、被災地で性的暴力が広がっていたことが調査により明らかにされています。
報告に使った事例は47件あり、データによると被害者の53.9%が受入先の建物内で被害に遭っており、また加害者の43.2%が家族や知人といった近親者であることがわかりました。このことから、性暴力が被災者の生活と身近な場所で起こる傾向にあることがわかります。
被災地の方々は、受入先の建物内であっても1~2人でいることを避け、なるべく団体で行動するように心がけてください。また、支援者の方々は、女性用の相談窓口を作るなど、性的暴力被害者が相談しやすいような環境作りをしてください。
以下がアメリカの検察局、警察局、及び支援団体の調査による、ハリケーン災害後の性犯罪調査報告書(日本語訳)です。
以下がアメリカの検察局、警察局、及び支援団体の調査による、ハリケーン災害後の性犯罪調査報告書(日本語訳)です。
■「台風カトリーナおよびリタ」という災害と性暴力 2006年7月■
ハリケーン・カトリーナとリタという災害発生時の性暴力の発生件数とその増加についての報告(原文報告書はこちらから)
2005年の晩夏、北米の湾岸地域に大災害をもたらした、ハリケーン・カトリーナとハリケーン・リタ。この災害から数週間後、性暴力被害者支援の専門家、法執行官、救急医療の専門家、そして検察官がチームを組み、ハリケーンを襲った地域で性暴力がどの程度起きたのかを調べるため、調査を立ち上げました。開始から6カ月の2006年7月、データベースをもとに、被害状況をまとめた報告がされました。
この報告に使った事例は47件。以下の情報はそのデータの概要です。
被害者の男女比
被害者の93.2%が女性、6.7%が男性
被害者の状況
災害の被害者 95%
ホストファミリーのメンバーになっていた人 2.5%
不明 2.5%
被害者の年齢構成
14歳以下 13.6%
15歳から24歳まで 36.4%
25歳から44歳まで 29.5%
45歳以上 20.4%
被害者の人種や民族(自己申告)
コーカソイド・白人 44.4%
アフリカンアメリカン・黒人 33.3%
ネイティブアメリカン 6.7%
不明 15.6%
性暴力が発生した地域と被害を申告した人の割合
被害者が自己申告した被害のうち83.3%はルイジアナで発生
当局に申告した組織の70%がルイジアナに拠点を置く
性暴力被害を受けた場所
災害時の避難所またはその他のシェルター 30.8%
被害者の自宅 10.3%
被害者の受け入れ先の家 12.8%
通り・その他の公の場所 12.8%
公的な建物(シェルターを除く) 10.3%
その他(ホテル、加害者の自宅、車の中) 23.1%
加害者について
加害者のうち男性が93.3%、残りは不明
加害者と被害者の関係
双方共に無関係 38.6%
家族 9.1%
現在あるいは過去のパートナー 9.1%
知人 25.0%
不特定・その他 29.6%
その他
被害者の26.8%が、24時間以内に支援機関に連絡
性暴力被害の54.8%が、現地の警察関係者に申告された
被害者のうち40%が医療 検査を受けた
アンケートに答えた者(機関)は、ほとんどが性暴力被害者の相談をうける機関(40.4%)か、州の性暴力に取り組む組織(51.1%)であった。
性暴力が多数発生していることへの懸念
このデータベースに47もの事例が登録されたということは、性暴力がいかに災害発生後に広がっているかを示しています。性暴力の被害は、平常時でも隠すことが多いため、報告された事例以上の被害が起きているであろうことは明らかです。
さまざまな苦しみが人々を襲う災害時は、最低限必要な食糧や家族の安全が優先されます。その結果、被害を届け出るチャンスがなかったり、性暴力の被害だけではなく、親しい者を失うなど複雑に絡み合った精神的ショックを乗り越えるために必要な精神力が減ってしまったりする状況に陥ります。さらに、被害者から最初に相談を受ける支援者らが直面する苦労を考えると、登録されたデータは過小評価されていると考えるべきでしょう。
(今回まとめた47の事例は、ハリケーンの被害を受けたテキサス州の主要な避難所の支援者が、非公式に報告した事例のごく一部にしかすぎません。これらの支援者は、ルイジアナ州あるいはテキサス州についた後に性暴力の被害者から「性暴力の事件はもっと多かった」と聞いてい ます。この調査結果には、インターネットを通じてさらに情報を加えることができます。もしあなたがカトリーナやリタのハリケーン災害に関連して、性暴力の被害者を支援していて、そのことを申告したいと考えているなら、NSVRCに連絡を取ってください。)
調査の概要
調査チームは、「サーベイ・モンキー」というウェブ上のプログラムを使い、インターネットでデータを収集しました。具体的な被害についての情報を集めることで、ハリケーンの最中あるいはその後に、被害が何件発生したかまたは通常より増えたのかを調査しました。手順は以下の通りです。
1アンケートのリンク先を、メールでアメリカ中の支援団体、司法機関、医療機関その他の関連組織に送る
2被害に関する情報を、被害者と直接接した専門家、あるいは専門家をサポートする人々(たとえば州の性暴力被害者支援団体のスタッフなど)が入力
※複数のデータが入力されることなどがないように、一般の人がデータベースにアクセスできないようにした。
データベースには、被害者を特定できる情報は入れないようにしました。(1つの被害を2回以上数えることがないようにするために必要な情報は収集)データを入力した人には所属組織の連絡先を確認しておき、入力した情報が正しいかどうかを検証できるようにしました。カリフォルニア公衆衛生局の品質管理の専門家が、データを更新し、真実かどうかを確認しています。データの概要は毎月連邦の性暴力リソースセンターに送られています。
調査チームのメンバー
アメリカ検察調査局、女性に対する暴力廃絶連盟、湾岸州地域警察局、警察局長の国際連合、ジョアンナ・アッシュバルト(巡査部長)性的暴力に関する訓練と調査組織、性的暴力に関するルイジアナ財団、女性と取り締まりに関するナショナルセンター、性的暴力に関する法と公的政策のための全米犯罪被害者法制度センター、家庭内暴力及び性的暴力に関するナショナルセンター、全米性的暴力対策リソース共有プロジェクト、全米性的暴力リソースセンター、州立性的暴力連合
執筆責任 ウェンディ・マーフィー(弁護士、被害者支援調査グループ)