「被災者像」に当てはまらないことによる「見えない問題」

NPO法人POSSEが主催する講座で、私たちが作成したカードを配布させていただきました。
内容とともに紹介させていただきます。

POSSEは労働相談、労働法教育、調査活動、政策研究・提言、文化企画を学生を中心とする若者自身の手で行っているNPO法人です。
東日本大震災後、被災地のNPOと連携しながら、仮設住宅への移転支援や、住民への生活支援などに取り組んでいます。

今回開催されたのは、「被災地とどのように向き合うか」をテーマとした3回連続講座。
講師は、第1回は岩田正美さん(日本女子大学人間社会学部教授)。
第2回は稲葉剛さん(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事)
まず被災地でのPOSSEの支援活動報告があり、その後講師の講演、という内容でした。

岩田さんからは「震災と社会的排除」というタイトルで、震災前も社会から排除されていた人々が、震災によりより一層排除される、というお話がありました。
「震災前にどのような生活を送っていたか」が、震災後の生活に大きく影響します。
震災後すぐは、その差は見えづらいですが、震災から時間が経つと、どんどん明らかになってきます。
例えば、避難所での生活の後、自分で賃貸住宅を借りて転居することができる人と、それが難しく仮設住宅に転居する人がいます。
仮設住宅では公的な物資の提供がないため、仮設住宅に転居することすら難しく、避難所生活を継続する人もいます。
そんな中、「日本全体の一体感」や、私たちがイメージする「被災者像」は、そこに当てはまらない人の排除をより一層強めます。
「被災者」は「同じではない」ことの確認と、「別枠での支援」が必要です。

稲葉さんからは「震災後の生活困窮者支援」というタイトルで、貧困問題が不可視化されている、というお話がありました。」
震災後、多くの被災者は、「家がなくなる」「金銭を失う」など、「貧困」においてもともとなじみのある問題が顕在化します。
このため、本来であれば「被災者」と「貧困者」への支援は、ひとくくりです。
しかし貧困対策と銘打った活動は、敬遠されます。
それは私たちの「貧困」に対するスティグマがあるためです。
「貧困者」の中から「被災者」だけにスポットライトが当てられ、本当に困った人々は声を上げられない状況です。
震災復興においても、被災者が声を上げ、被災者主体の活動にお金をつけることで、被災者中心の街づくりに取り組んでいくことが必要です。

私たちが応援する女性・子どもは、まさに「被災者像」に当てはまらない、「声を上げられない」もしくは「声を上げても聴いてもらえない」存在です。
女性・子どもが抱える問題は「見えない問題」とされるため、政府が様々な方針を打ち出しているにもかかわらず、実際の被災地での取り組みは、進んでいません。
継続して活動を続けていく必要を感じました。

なお、POSSEの連続講座、次回は7月10日です。
講師は仁平典宏さん(法政大学社会学部准教授)、テーマは「被災者とどのように向き合うか」です」。
【講座詳細はこちらです】
様々な示唆を与えてくれる、素敵な講座ですので、是非足を運んでください!