「東日本復興会議」による「復興への提言」を「女性・子ども」の視点で読み直す

東日本大震災からの復興策を検討する政府の復興構想会議
が、625日に「復興への提言」を決定し、管首相に答申しました。


提言のポイントとして臨時増減の提言が大きく取り上げられていますが、私たちは「女性」「子ども」の観点から、提言を読み直してみたいと思います。

提言の中で「女性」「子ども」に触れているところは以下です。

***

p.11
1 新しい地域のかたち
(6)復興事業の担い手や合意形成プロセス
2 住民間の合意形成とまちづくり会社等の活用
 なお、住民意見の集約にあたっては、女性、子ども高齢者、障害者、外国人等の意見についても、これを適切に反映させ、また将来世代にも十分配慮しなければならない。

2 くらしとしごとの再生
p.14
(2)地域における支えあい学びあう仕組み
1 被災者救援体制からの出発
 さらに、被災したすべての子どもへの良質な成育環境を担保せねばならない。とりわけ、心のケア等の相談援助や教育環境の整備を長期的視点に立って行う必要がある。また、両親が亡くなった子ども、あるいは、両親が行方不明の子どもについては、里親制度の活用を含め、長期的な支援を行わねばならない。

2 地域包括ケアを中心とする保健・医療、介護・福祉の体制整備
また、大学病院を核とする医師や高度医療を担う人材育成のための教育体制の整備を進め、大学・専修学校等の学校教育機関を含む多様な訓練機関を活用した職業訓練などを行い、それらの分野を担う人材育成を進める。これにより、若者・女性・高齢者・障害者を含む雇用を被災地において確保し、地域の絆をより深める効果が期待される。

p.15
3 学ぶ機会の確保
 さらに、今回の震災で親や身内が被災したことにより、経済的に大きな損失を被った子どもや若者達が就学困難な状況に陥ることなく、広く教育の機会を得られるよう配慮する。このため、被災地のニーズや実情を踏まえ、奨学金や就学支援等の支援を適切に実施していく必要がある。また、被災地の子ども達に、被災の影響により学業面や生活面で支障が生じることのないよう、教職員やスクールカウンセラー等の適切な配置を図る。

(3)地域における文化の復興
1 人々を「つなぐ」地域における文化の復興
 逆境の只中に立ち尽くすことによって、地域の文化の底力は試されるのだ。たとえば、過疎地における祭りが、地域を超えた子どもを外から動員することによって、生き生きと蘇えった例があるではないか。

p.34
4 開かれた復興
(4)人々のつながりと支え合い
1 地域包括ケアと社会的包摂の推進
 復興に際しては、声を出しにくい人々にも配慮することで、誰をも排除しない包摂型の社会づくりを行うべきであり、その理念に基づく諸施策を推進すべきである。
たとえば、これまで地域に居場所を見出せなかった若者や、孤立しがちな高齢者・障害者、声を上げにくかった女性などが、震災を契機に地域づくりに主体的に参加することが重要である。とりわけ、男女共同参画の視点は忘れられてはならない。

***

え、これだけ?
そう、39ページの提言の中で、「女性」「子ども」に触れているのはこれだけなんです。

女性は震災復興のまちづくりに主体的に参加し、保健・医療、介護・福祉に従事することが期待されています。
まちづくりの方針を決定する役割を担うところまでは言及されていません。
また、ケア的な仕事を担うという、ジェンダー役割が求められています。

子どもは教育の場を確保されることが大切とされています。
子どもは大人から守られるだけの存在として位置づけられており、自分で考えて行動したり、復興のまちづくりを考える場に参加することは、想定されていないのです。

そもそも、震災復興会議のメンバー15人中、女性はわずか1人。
検討部会のメンバー19名中、たったの2人です。
子どもは含まれていません。

このこと自体、これまでと変わらないまちづくりが進められてしまうことを、象徴しているのではないでしょうか。

誰もが安心して暮らせるまちづくりには、方針を決定する会議が多様なメンバーで構成され、様々な立場からの意見が取り入れられることが不可欠です。

少なくとも、今回の提言で触れられた、女性・子どもに関する施策は、しっかり実現されるよう、見守り、声をあげていく必要がありますね。